可愛がられるのも世話焼きのうち?(1)
朝日が昇る頃。
「さて、と。今日からも、しっかり働きますか」
メイドが届けてくれた服に腕を通し、オレは髪をなでつけた。
どう頑張って働いても給料分には届かなそうだが、だからといって楽をしようとは思わない。
この頑張りが、家族のためになるなら尚更だ。
「ひとまず、ユリアのところにいくか」
身分の高い人間は自分で身支度をしないと聞いたことがある。
その時は、そんな馬鹿げた話があるかよと鼻で笑ったが、世話係なる仕事がある以上、嘘じゃなかったのだろう。
「着替えやらなんやらの手伝いをして、それから……どわっ!」
一日の動きの予測を立てつつ部屋を出たオレは、
扉の前で立っていた人物にぶつかった。――ユリアだ。
「おはようございます、バンさん」
「おはよう……って、おま、なんで……着替えてんの? 自分で着替えたのか?」
鼻を抑えながら見上げた主人は、少し髪に寝癖がついていたが、しっかりと身支度を調えていた。
「? はい。ええと、僕、そんなに何も出来ないように見えます?」
「いや、偉い人って自分でやらねぇって聞いてたから……」
「僕は自分でやりますよ。人にやって貰う方が面倒ですし。
ドレスを着るとかならともかく」
「そりゃそーだ。
それで? ユリアはどうしてここに?」
「朝ご飯までもう少し時間があるので、少しお散歩でもしようかと思いまして。
窓からバラ園が見えるでしょう? 花びらが朝露に濡れて綺麗なんですよ」
オレはユリアと連れ立って階下の庭園に向かう。
散歩を終えると、一緒に朝食を取った。
飯は絶対に食べきれない量のパンとフルーツとスープとサラミと生ハムと……
とにかく、物凄い量が出た。
もちろん食べきれなかった。でも、どれもこれも美味しかった。
夢にまで見そうなほど、まじで美味しかった。
それから、屋敷の案内をしてもらい、
おやつ時には、さっき散歩したバラ園でティーパーティーが開かれて――
「オレ、全然、世話焼けてねぇんだが!?」
シルクのような口触りの紅茶を一口すすってから、
オレは耐えきれずに、席を立った。