忍び寄る「黒」と赤い過去(12)
* * *
「な、な、な、な、なにっ、なにっ、しっ……」
カーテンを閉め切つた部屋は暗かったが、
夜の眷属であるセシルには、何もかもをバッチリ見えているようだ。
オレたちは硬直した。
「セシル! 大丈夫か!? 何があっ――――」
慌てた足音が聞こえてくると、乱暴に扉が閉まる。
「……邪魔したようで、悪かったな」
ヴィンセントが扉越しに謝った。
それから何かを喚くセシルの声が遠ざかっていき、
しばらくして、静寂が訪れた。
* * *
オレたちは非常に気まずい空気の中、ベッドに寝転がっていた。
ぼんやりと天井を見上げ、無意味に瞬きをして時折詰めていた息を吐き出す。
あのまま、続きをするのは不可能だった。
しかし、このまま寝るのも絶対に嫌だ。
「なあ、ユリア」
充分なクールダウンをおいてから、オレはユリアに向き直った。
「……はい?」
まだお互いに裸なのが救いだった。
オレは恋人の顔を覗き込み、唇に吸い付く。
「ん……バンさん?」
「さっきの続き、するぞ」
「え、でもっ……」
ユリアの躊躇う理由は分かる。
オレの息子は今までにないほどしょぼくれているからだ。
しかし、ついさっき、やる気を見せたのを考えれば、
きっと不可能ではないはず。
「大丈夫。なんとかなる」
自分で言いながら、なんとかなるってなんだよと思いながら、
再び口付けた。
ゆっくりと舌を絡め取る。
躊躇いがちだったユリアの反応も、次第に積極的になっていく。
オレは彼の股間に手を伸ばした。
彼もまた、オレのソコを握りしめる。
2人で体をくっつけ合って、互いに刺激をしていると、
ユリアのソコは直ぐに硬度を増した。
「ん、バンさん……」
「……そろそろ、挿れられそうだな」
「ダメですよ。
バンさんは、まだ気持ち良くなってないんだから」
ユリアは片方の手指を唾液で濡らすと、
オレの尻穴に突き入れた。
「はぁうっ……」
先程のように穴口を拡げるように、指が動く。
そうして、ユリアはオレの唇を塞いだ。
「ん、んむっ、ちゅ……はぁ……んんっ……」
加速度的に感情が昂ぶっていくが、
なかなか体の方がついてこない。
早く勃てよ……!
オレは心の中で息子を叱責した。
が、待てど暮らせど、勃ち上がる気配がない。
このままでは、また出来ないんじゃないか。
オレはつ、と背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
咄嗟に湧き上がった不安をねじ伏せたものの、
一度、考えてしまったせいで意識がそちらにばかり向いてしまう。
そうこうしているうちに、ユリアの指が中から引き抜かれた。
「また今度にしましょうか」
そう言った彼の表情は柔らかなものだったけれど、
ガッツリ落ち込んでいるのは空気で伝わってきた。
「な、なあ。そんなに勃つのって大事か?
ちゃんと気持ち良くなってるぞ、オレ」