忍び寄る「黒」と赤い過去(8)
その日の昼頃。
オレは仮眠を取るべく、カーテンを閉め切ってベッドに潜り込んだ。
夕方には起きてバラ園の手入れをしたい。
だから、早く寝て起きなければならないと言うのに、
無駄に頭が冴えてしまって、しかもなんだか凶悪な気分だった。
ユリアをいつか失うかもしれないと考えると、怖くてたまらない。
気が付くと、彼が生きることを優先するためにはどうすればいいかを考えている。
アイツの意思なんて関係なく、コントロール出来るのならしたい。
なんとか言いくるめて、改めさせたい。……最低だ。
「……ユリア」
ユリアに触れたいと思った。
彼のぬくもりを確かめて、キスをして、舌を絡めて、奥深くで繋がれば、
冷静になれる気がする。
少しは気が紛れる。安心できる。
上掛けを頭までかぶって、体を丸めた。
……ユリアのことになると、オレはオレでいられなくなる。
しち面倒くさい奴になる。
アイツの決意を尊重したいのに……失いたくない。
部屋の扉が鳴ったのは、そんな時だ。
オレは飛び上がるようにして、体を起こし、
足早に扉に駆け寄って、ドアを開いた。
「良かった。まだ、起きてた」
枕を抱きしめたユリアが立っていた。
「……今日はどうしたんだよ」
「ベッド、壊しちゃったから」
「別の部屋、整えたはずだけど?」
「どうせ部屋を変えるなら、
いっそのことバンさんのとこで寝ればいいやって思ったんですよ」
「ベッド一人用だし、狭いぞ」
「その分、くっつけるでしょ」
ニコリと笑って、ユリアがいつものようにオレを抱き上げる。
オレは彼の首に腕を回すと、ぎゅっとすがりついた。
「バンさん?」
「……ムラムラする」
耳朶に囁けば、ユリアがきょとんとする。
それから顔を真っ赤に染めてあたふたし始めた。
「ば、バンさんっ……!?」
「聞こえなかった?」
オレはユリアの腰に両足を絡ませる。
ついで彼の頬を包み込み、少し強めに顔を上向かせた。
「お前の、しゃぶりたい」
ユリアが何か口にする前に、オレは情熱的に口付けた。