番外編『この美しく閉ざされた世界で、あなたと』(1)
僕の叔父さんは吸血鬼です。
長生きなので、ちょっと変わっています。
* * *
「生誕おめでとう、ユリア」
ハル叔父さんが僕の出生祝いに来てくれたのは、
6歳の時だった。
「僕はハル。7月のハル。君の叔父だ。
プレゼントを持って来たよ」
叔父さんが、ニコリともせずに僕に差し出したプレゼントは、
何かの動物の大腿骨だった。
「あの、これは一体……」
「歯が痒い時に噛んだりするでしょ?」
「叔父さんは噛むんですか?」
「噛まないけど」
「え……」
僕も噛みません。
そう言おうとした僕は、彼の視線が僕の尻尾と頭上の耳に向けられているのに気付いた。
あっ、もしかして。
僕のこと、犬か何かと思っているのかも。
(この耳と尻尾は、数年後、自分で消したり出したり出来るようになった)
「ありがとうございます。大切にします」
「そう」
* * *
次の日、叔父さんは上腕骨を持ってきた。
「どうぞ」
「……叔父さん、この骨は」
「遠慮しなくていいよ。まだたくさんあるから」
「ほっ、骨はっ! その、もう、十分です……ッ!」
このままだと、一式揃いそうで怖い。
慌てる僕に、叔父さんは不思議そうに首を傾げる。
「それなら、他に何が欲しい?」
僕は困った。
だって、生活に必要なものは全て揃っているのだ。
「あの……叔父さんは、お忙しいんですか?」
「忙しかったことなんてないよ」
「それなら、僕の側にいてください」
その頃の僕は、母も父も失ったばかりで、寂しかったんだ。
僕の言葉に、叔父さんは神妙な顔をした。
「肉付きがいいの?」
「骨の話はしてませんってば!」