虚飾の檻(7)
「バンさ……」
ユリアの濡れたズボンを手間取りながらもくつろげ、
足の付け根に手を這わせる。
「ぁ……っ、ちょ……何して……」
下着を膝まで引き下ろし、オレは彼の肉竿を扱いた。
ソコはすぐに応えてくれる。
「相変わらず元気だなー。お前」
「んっ……」
水が揺れる。
広い背中に口付けながら、傘張る先端を親指で弄り、
もう片方の手で竿の後ろをやわやわと揉む。
「ぁう……そんなにしたら、イッちゃうよ……」
「気持ちいいか?」
「うん……水のせいかな……
いつもと違うけど、凄く気持ちいい……」
次第にユリアの呼吸が荒くなっていく。
彼は岩にすがりつくと、水の浮力に身を任せ尻を突き出すようにした。
そんな彼の態度に、ふと悪戯心が湧いてくる。
オレはユリアの尻の割れ目を指先でくすぐってから、
後孔をツンと突いた。
「うわぁあっ!?」
すると、聞いたこともない悲鳴を上げて、
ユリアが勢いよくこちらを振り返る。
「ば、ばばば、バンさんっ……!? 何処触って……!?」
「いやさ、たまにはオレが抱く側でもいいかなって」
「へっ……!?」
ニヤリと口の端を持ち上げれば、ユリアの顔色が赤と青を行ったり来たりした。
「ま、ま、ま、そそそ、それは、ちょっ……」
「こん中、弄り回すとヤバイ気持ちいいぞ」
キュッと締まった穴口をそろそろと指先で撫でる。
「そ、それは……ぅ……そうかもしれませんけど……」
ユリアは眉根を八の字にして、心底困ったような顔をした。
「そんな怯えるなよ。とびきり良くしてやるからさ」
「うーん……うーん、うーん、うーーーん……」
ユリアは岩に額を押し付けると、何度も唸った。
その真剣な様子に思わず笑い出しそうになって、
オレは冗談だと告げるべく口を開く。
と、オレが何か言うよりも早く、ユリアが震える声を絞り出した。
「……分かりました。
バンさんがそこまで言うなら、してください」
「え……」
「正直なところ、お尻に何か挿れるなんて考えるだけで怖いです……
でも、僕はあなたにしちゃってるわけだし……不公平ですもんね……」
「不公平って、問題はそこなのか……?」
呆気に取られてまじまじと見つめれば、
彼は唇を震わせながら、瞼をギュッと閉じる。
「あの、初めてなので……優しくお願いします!」
それからこちらに尻を突き出してきた。
「……ふはっ」
その色気のかけらもない格好に、オレは堪えきれず噴き出してしまう。
「はっ、ははっ……なんだよ、優しくお願いしますって……
ははっ、は、はははっ……!
冗談だよ……っ!」
「えええ!? 冗談だったんですか!?」
目尻に浮かんだ涙を指先で拭って、オレは続けた。
「悪い、悪い。
けど、オレそっちはからっきしなんだわ」
「それって、出来ないってこと?」
「うん。怖いんだよ。
お前が尻に入れられるの怖いって思うのと同じだな」
ケタケタ笑って、ユリアの背中を叩く。
「まあ、ヤれたとしてもヤんねーけど。
ほら、どっちも尻でしか感じられなくなったら困るだろ?」
「確かに」
ユリアは生真面目に頷く。
それがまたおかしくて、オレは声を上げて笑いながら、
彼の背中にくっついた。
「にしても、お前って……すげえな。
掘られてもいいだなんて、なかなか言えねえよ」
「僕はバンさんになら何されてもいいと思ってるから。
まあ、ちょっと悩んじゃいましたけどね」
体ごとこちらを向いたユリアが言う。
「ユリア……」
オレは言葉を失った。
その直向きな眼差しは、あまりに真っ直ぐで、
秘めた夜の記憶まで映し出すのではないかと恐ろしくなる。
「大好きだよ、バンさん。
僕ね、あなたと一緒にいられて、本当に幸せなんです。
毎日、凄く楽しくて、寝る前になるといつもワクワクしてる。
あなたと一緒に外へ出て良かった」
そう言って微笑むと、ユリアはオレの額に唇を押し付けた。
次いで、こめかみ、頬、鼻先を経由して唇を塞がれる。
「ん……」
どちらからともなく舌を伸ばし、
表面を擦り合わせるようにした。
互いの唾液を啜り、角度を変えて息継ぎしながら、
歯列を舐めたり、唇で扱いたりする。
「は、ぁ……バンさん、もっとこっちきて……」
「ん……」
抱き合うように身体を密着させて、
互いに相手の下腹部に手を伸ばした。
ソコはもうすっかり熱く反り立っていて、
オレたちは示し合わせたかのように、
反り立つ熱を、そっと手の中に包み込んだ。