虚飾の檻(6)
「ユリア……なんでここに……」
「水浴びするって言うのに、
着替えも持たないで出て行ったから慌てて追いかけたんですよ」
オレを抱き上げながら、ユリアが言う。
「あー……」
「やっと追い付いたと思えば、服のまま川で泳いでるし。
驚いたのなんのって」
「泳いでいたと言うか……」
言葉に詰まっていると、ユリアは何かに気付いたように「あっ」と、声を上げた。
「もしかして……水浴びついでに洗濯も済ませようとか思いました?」
「……なに?」
「良かった、バンさんも同じこと考えてて。
でも、ダメですよ。意外とここって流れが速いから、
体洗ってるうちに服が流れていっちゃうんです」
「お前、やったのかよ」
「えへへ……」
照れたようにユリアが笑う。
オレもつられて笑うと、彼の鼻の頭を抓んで引っ張った。
「ふがっ……」
「横着すんなっつったろ」
「ええ、でもバンさんだって……」
オレはやってねーよ。という言葉を飲み込んだ。
じゃあ何してたんですかと聞かれても、答えなんて持ち合わせていない。
「……ったく、しょうがねえヤツだな」
抓んでいた指を離して、オレはユリアの頬に触れた。
飴色の髪が陽光を照り返し、キラキラと輝いている。
キレイだな、と思った。
背景の眩い森の緑も、小川のせせらぎも、
彼にはとてもよく似合っている。
「あの……バンさん。
そんなに見つめられると、照れてしまうんですが」
そんなことを言いながら、ユリアが頬を染めて目線を逸らした。
「いい男なんだから仕方ないだろ」
「いい男……」
キョトンとした彼は、続いて眉尻をキッと持ち上げた。
「それを言うならバンさんの方ですよ!」
力強く言い放ち、ユリアは目を細めてオレを見た。
「バンさんみたいに、優しくて誠実で格好いい人いません」
「……そんなことねぇよ」
オレは曖昧に笑って目線を落とす。
ユリアの真っ直ぐな眼差しを受け止められない。
「もう。すぐそうやって謙遜する」
「そりゃお互い様だろ」
オレは苦笑と共にユリアの腕から逃れると、踵を返した。
「あれ?何処行くんですか?」
「服脱ぐんだよ。
流されるってお前が言ったんじゃねえか」
「やっぱり洗濯しようとしてたんじゃないですか!」
オレは適当に泳ぐと近場の岩場によじ登った。
それから、濡れた服をその場に脱ぎ捨て、川に飛び込む。
「わっ……!」
水飛沫を頭からかぶって、ユリアが声を上げた。
「お前も脱げ」
「泳ぐんですか?」
「さあ、どうだろうな」
「……!」
意味深に微笑めば、ユリアはそそくさと
オレがさっきよじ登った岩まで、手で水をかいて歩いた。
その後についていったオレは
彼が岩に手をついたタイミングを見計って、背後から抱きついた。