麗しき僧服の男(5)
「ん……」
触れるだけの口付けを2度、3度と重ねれば、
それは次第に激しさを増していく。
「ん、んんっ、ん……はっ……ユリア……」
角度を変えた拍子に唇をこじ開けられ、
ザラついた舌が侵入してきた。
抱きしめられているせいで身動きも取れず、
ねっとりと口中を貪られる。
「バンさん……好き……好きだよ……」
くちゅくちゅと水音を立てて、舌の表面を擦り合わせた。
口の端から溢れかけた唾液を啜れば、
オレの背に触れていたユリアの手が尻に移動する。
「んっ……こら……どこ、触って……」
身を捩れば、熱く硬いものが太腿の辺りに押し付けられた。
「バカ……なに、おっ勃ててんだよ……」
「バンさんだって、硬くなってるでしょ……」
息継ぎの合間に短く会話を挟んで、
再び唇を重ねる。
2つの欲望がズボン越しに触れ合うと、
自然と腰が揺れた。
「バンさん……中、入りたい。ダメ?」
銀糸を引いて唇を離し、ユリアが掠れる声で囁く。
「ダメに決まってんだろ……」
オレは彼の肩口に額をくっつけて答えた。
ベッドを汚すわけにはいかないし、壁だって……薄過ぎる。
「ですよね」
ユリアがしょんぼりと頷いた。
そんな彼を前に、オレとしては何もしないわけにはいかず、というか、オレだって触れたいわけで、
溜息と共にグリグリと額を押し付けた。
「バンさん?」
「……口でなら、してやるよ」
「え……」
ユリアがまじまじとオレを見下ろしてくる気配。
やや間があってから、ユリアは手を上げる勢いで口を開いた。
「そ、それなら、僕もバンさんの舐めたいです!」
「それはダメ」
「ええっ、何でですか!?
僕ばっかり気持ちいいのイヤですよ!」
「ワガママ言うなら、このまま寝るぞ。いいのか?」
ユリアの拙い舌遣いに翻弄されたら、
我慢が効かなくなる。
断固とした態度を貫けば、
彼は子供みたいに「うー……」と唸った末、短く溜息をついた。
「……分かりました」
「よし。じゃあ、オレの顔のとこまで来い」
「えっ、あ、あの……?」
体を起こしたユリアが、困ったように眉根を下げる。
「早く。跨げ」
「こ、こうですか?」
「そうそう」
オレはユリアのズボンをくつろげた。
目の前に現れた屹立を手で支え、
オレはその先端をペロリと舐める。
「……っ!」
「この体勢のまま、挿れてみ」
根本を扱きながら告げれば、
ユリアがギョッとした。
「ま、待ってよ、そんなことしたら、バンさん苦しいですよ!?」
「こっちのが、普通に舐めるより、こぼしずらいんだよ」
「こぼしずらいって……でも……」
オレが大口を開けて、見せつけるように裏筋を舐め上げる。
顔を持ち上げ、パクリと先端を口に含めば、
ユリアは観念したのか、躊躇いがちに腰を進めた。
「んぐっ……」
熱い肉欲がゆっくりと口中に埋まっていく。
オレは喉奥を開くようにして、それを受け入れた。
凶悪に太くてデカい肉欲で、口の中がいっぱいになる。
「バンさん。平気? 痛くないですか?」
「ん、んむ、んんっ……へーき、だ……
無理なら足叩いて、ん、合図するから……」
「わ……分かりました……」
ベッドの上の部分を掴んで、
ユリアが腰を前後させ始める。
恐る恐る、労るように。
「バンさん……」
目を閉じて、竿肌に歯を立てないよう気を付けていると、ふいに名前を呼ばれた。
「ん……? どーひた?」
ユリアの喉が上下する。
彼は唇を戦慄かせてから、首を振った。
「……いえ」
大きく熱い手が、優しくオレの髪を撫でる。
オレはユリアの腰を抱き寄せた。
「ん、んんっ、ん……」
「バンさんの、口の中……凄く、ねっとりしてて、気持ちいいよ……」
彼の呼吸が荒さを帯びていくに従って、
次第に遠慮や、躊躇いは薄れていき……
* * *
腰が止まらない。
少しでも気を抜いたら、バンさんの喉が詰まってしまうというのに。
「んっ、ぐっ……ぅ、んんっ」
どうしよう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
頭の中が、意味を持たない言葉で埋め尽くされている。
「バンさん……バンさん……っ」
限界に広げられた小さめの口を、
肉欲が蹂躙している。
無抵抗な相手の顔に跨がって、こんなことをするなんて、
背徳的でなくて、なんだろう?
「はぁ、はぁ、はぁ………」
体が燃えるように熱かった。
興奮し過ぎて、視界が涙で潤んでいた。
「バンさん、痛くない? 苦しくない?」
何度も何度も問いかけながら、
僕は、彼の限界を探っていた。
彼が足を叩いて止まれと言ったとしても、
それに従える自信なんてなかった。
それでも、僕は気遣わしく声をかける。
そして、どんどんエスカレートしていく。
「大丈夫? 本当に……?
無理だったら、すぐに言って下さいね……」
バンさんの頬は苦しいせいなのか上気していた。
目尻は涙で濡れ、口の端から垂れる唾液が、艶やかに細い顎を伝う。
たまらなかった。
僕は、今、彼を支配している。
そのことが心地良く、全身の血が沸騰するかのように気持ちが昂ぶる。
「ん、んぶっ、ぐっ……はっ、ぁ……」
「バンさん」
名前を呼ぶと、彼は潤んだ目で僕を見上げた。
その瞳には僕だけが映っていて、とても安心した。
「そろそろ、出そうです……」
出せよ、と促すように、バンさんは僕の腰を撫でた。
「うん……」
僕は、彼の頭を抑えると、腰の動きを速めた。
腰を抱く彼の指にグッと力が入る。
「ん、くっ……ぁ、バンさん、バンさんっ、イクよ、イッ……」
体が硬直し、下腹部にわだかまっていた熱が勢いよく弾ける。
形の良いバンさんの眉が、苦しげに寄った。
「バンさん。……全部、飲んでね」
バンさんの細い喉が何度も上下する。
長い吐精だった。
えずいた拍子に、逆流したのだろう白濁が、
バンさんの鼻から溢れる。
僕は腰を引かずに、親指の腹でそれを拭い、
バンさんを見下ろした。
彼は何もかもを見透かすように、目を細めた。
微笑みかけてくれたのだと思う。
その瞬間、雷が落ちたみたいに体が打ち震えた。
それは、喉がカラカラになるほどの興奮。
僕は受け入れられている。
僕は愛されている。
大丈夫。
大丈夫だ。
* * *
翌日の朝、オレとユリアはスヴェンと一緒に、
街道の村を出た。
彼の案内は的確で、
オレたちは予定よりもずっと早くにメティスの街に到着した。
街は他と同様、為政者が政務を執り行う城を中心に、
放射線状に商業区や、居住区が広がり、
昔の名残か、1番外側は高い壁に囲まれていた。
町の出入りは、日中のみと制限があるようだ。
厳めしい門番が見守る中、馬を進めれば、
目の前に、白い壁が印象的な家々が見えてきた。
高い石造りの建物だ。
祭りの期間だからだろうか、道には屋台が並び、
街全体が花や旗で色鮮やかに飾り立てられている。
「凄い! 凄い凄い凄い!!
バンさん、見て下さいよ! 人がたくさんいますよ!!」
「メティスはこの地方じゃ1番大きな街ですからね」
スヴェンが馬上で誇らしげにする。
ついで、彼はオレの方を見て小首を傾げた。
「どうかしたんですか? 怖い顔をして」
「ああ、いや……」
オレは無理やり笑みを浮かべると、何でもないと頭を振った。
けれど、動揺はすぐには消せない。
手綱を握る手に汗が滲んでいる。
探しあぐねて諦めた記憶にまさに今、到達したのだ。
メティス。
知識と祈りの街。
――教会の、領土だった。