人狼坊ちゃんの世話係

麗しき僧服の男(4)

 数年、客が来ていないという割には、
 そのこじんまりとした部屋は隅々まで掃除が行き届いていた。

 突き出し窓の側には、可憐な野花が活けられた花瓶が置いてある。

 壁際のベッドはシングルサイズで、
 2つ並べられた枕の片方が、半分くらいはみ出していた。
 オレとユリア2人で横になるには、もちろん狭過ぎだ。

「ユリア。オレは……」

 床で寝る、オレがそう言う前に、
 ユリアは軽い足取りでベッドに潜り込むと、
 コチラを振り返って、両腕を広げた。

「バンさん!」

「いや、床で寝るから」

 オレは部屋に鍵をかけ、荷物を適当に置くと、
 近くのチェストの上から上掛けの1つを手に取った。

「ええっ? そんなの、ダメですよ!
 背中が痛くなっちゃいます!」

「慣れてるから平気だよ。
 それにそのベッド、大の男2人が横になるには無理があるだろ」

「そんなことないですってば」

 オレは構わず上掛けを体に巻きつけて、寝る準備を始める。
 するとユリアがベッドを下りてきて、唐突にオレを背後から抱き上げた。

「おいっ……何して……っ」

「恋人を床でなんて寝かせられません」

 言うやいなや、ユリアはオレを抱いたままベッドに横になる。

「ほらね。無理じゃないでしょう?」

 無理じゃないが、ムリヤリではある。

 しかし、これ以上は何を言っても無駄だと諦めて、
 オレは自分を抱きしめている腕をポンポンと叩いた。

「……分かったよ。
 寝相が悪くて押し出しちまっても、恨みっこなしだからな」

「はい!」

 底抜けに楽しげな返事に、オレは思わず苦笑をもらした。

「……ねえ、バンさん。メティスってどんな街なんでしょう?
 図書館があるってことは、結構大きいんですよね?」

「たぶんな」

「しかも、お祭りも見れるだなんて……凄く楽しみです」

「うん……」

 瞼を閉じて頷けば、抱きしめる腕に力が込められた。

「バンさん。僕を連れ出してくれてありがとう。
 あなたがいなかったら、外に出てみようだなんて考えもしませんでした」

 オレは恋人の方に体を向けると、髪にそっと手を置く。

「大げさなヤツだな。
 オレがいなくたって、お前ならいずれは屋敷を出てたって」

「そんなことないよ」

 ユリアは一度言葉を句切ると、オレの手に手を重ねた。

「あなたは、僕の欲しいものをいつだって与えてくれる。
 僕自身が気付かなかったことさえ……」

 手を引かれ、甲にちゅ、とキスが落ちる。

「バンさん。あなたは、僕にとって希望なんだよ」

 続いて、優しく唇を塞がれた。

-118p-