処女喪失(1)
ガムテープを巻いた苦しい胸元が気にはなったが、
クラスメートは誰も俺の変化に気付いたりはしなかった。
俺自身も自分の身に起こったことをまだ把握できていなかったし、
布団の中でリアルな悪夢を見ている気分で、いつも通りの学校生活を送っていた。
急激に現実を突きつけられたのは、二時間目が終わってすぐのことだ。
「……翔太。ちょっと待て」
「な、なに?」
貴文とたまたま廊下ですれ違ったら、突然、腕を掴まれた。
「来い」
彼は有無を言わせない様子で俺の腕を引くと、
いつもダラダラと過ごしている屋上に向かう。
(バレた? まさか、そんな……)
毎日顔を合わせる友人だって、感付いた様子はなかった。
輪をかけて男に興味のない貴文が、俺の変化に気付くわけ……
「どうしたんだよ、貴文。もう授業始まるよ」
「ブレザー、脱げ」
屋上に着くやいなや、彼は開口一番そう言った。
「……」
「聞こえなかったのか? ブレザーを脱げって言ったんだよ」
「な、なんで……?」
貴文の鬼気迫る表情に、俺は愛想笑いを浮かべると一歩一歩退いた。
脱ぐなんて無理だ。不可能だ。
逃げなければと頭の中で警告音が鳴り響く。
しかし逃走路を探しているうちに、気が付けば壁際まで追い詰められていた。
知れず、庇うように胸元を押さえてしまう。
「なんでもクソもあるか」
貴文は問答無用で俺の腕を掴むと、ブレザーを掴んだ。
「何するんだよっ、い、意味分かんなっ……」
彼の力は、ガリの俺より明らかに強くて、
俺はろくな抵抗もできないまま、ブレザーを剥ぎ取られる。
「やめっ……!」
貴文は無言だった。
無言で暴れる俺を抑え付け、次いでワイシャツを脱がしに取り掛かる。
ブチブチと音がして、ボタンが飛び散った。
「おまっ、シャツ破れてっ……!」
「後で買ってやる。……で、これはどういうことだ?」