こんなもの愛じゃない。のに、(3)
「俺がお前のことを嫌いになったら、お前は俺のことを好きじゃなくなる。
そんなの、愛じゃないだろ」
「でも、お前は俺のこと好きだろ?
だったら、お前が俺のことを好きでいてくれるまで、
俺がお前のことを好きでいてもいいはずだ」
「お、俺は、もう……」
お前のことなんて、嫌いだ。
(そう言えよ。俺の人生のためにも。軌道修正するなら今しかないんだ)
分かってる。分かってるのに。
だって、あの貴文が……俺のことを好きだって言うんだぞ?
「なんで……俺は、こんな……」
もう、彼の何にこんなに執着しているのか分からない。
ただ彼を手放したくない。彼を手に入れられるなら、何でもする。
本当に、何だって。そんな気持ちだった。
「翔太。俺のこと、愛してくれよ」
昔の、優しかった貴文はもういない。彼は変わってしまった。
いや、壊れてしまっていた。
「……愛してるよ」
俺は掠れた声で呟く。
これは愛でもない。恋でもない。ただの……こじらせたもの。
「愛してる。お前のこと、世界で一番……」
「翔太……」
「でも、ごめんな」
俺は、頬に触れる貴文の手に手を重ねた。
べたりと白濁で彼の手を汚す。
「俺はもう男に戻っちゃったんだよ。
お前の好きな女の体じゃないんだ。だからもう、お前の気持ちには応えられない」
「はっ……何を言うかと思えば。そんなの大した問題じゃねーよ」
貴文は、俺の手を取ると指に舌を這わせた。 生臭いソレを、舌で味わうように丁寧に舐め取る。
「何、して……」
「男だろーが、女だろーが、関係ない。
俺は、翔太。お前のことが欲しい。そばにいて欲しいんだ」
咄嗟に言葉が出てこなかった。
あんなに男を嫌ってたのに。貴文がこんなことを言うなんてありえない。
「翔太、お前のためなら、俺は何だってするよ。
二度と他の奴を抱いたりしないし、お前が信じられないっていうなら、
携帯の連絡先全部消す。俺にはお前だけだ。お前だけが欲しいんだ。
頼むよ。俺のこと、愛してくれ。この、空っぽの中を……満たしてくれ……」
貴文に上掛けを剥ぎ取られる。
ついで、彼はとろける笑みを浮かべて俺を組み敷いた。
「お前がいれば、何もいらないんだ」