幸せの代償
家に着くと、母はまだ会社から帰っていなかった。
俺はフラフラと浴室へ向かい、制服のままシャワーを頭から浴びる。
堪えていた嗚咽を漏らすと足から力が抜けて、その場にへたり込んだ。
気持ち悪かった。屋上での記憶も、肌に張り付く制服も。
(俺、いつまで女のままなんだ? まさか、ずっとこのまま……)
ふいに焦燥感と後悔が胸に押し寄せてきて、今更、現実を理解した。
(病院に行くか? でも、目が覚めたら女になってました、だなんて、誰が信じる?
ってか、この体のままなら……戸籍とか、どうなるんだ?)
どうでもいい疑問ばかりが、頭を埋め尽くしていく。
(一時的なものだと思ってたけど……そういえば、この体はどこまで、女なんだ?)
貴文だけじゃない。佐藤やその他にも中出しされた。
(ま、待てよ。妊娠? 嘘だろ。そんな……
そんなことになったら……)
全身が震え出す。
(うあ……嫌だ……)
次の瞬間、胃液が逆流して、俺は盛大に嘔吐した。
「うぇっ、えっ、げぇっ……!」
気持ち悪い。
気持ち悪い、気持ち悪い。気持ち悪い。
俺はバカだ。しょうもない、バカ野郎だ。
「掃除……しないと……」
俺はフラフラと立ち上がった。
先延ばしにしていい問題ではないが、今は何も考えたくない。
……その日の夜は、死ぬほど不安だった。
眠ることもできなくて、時間ばかりが進んだ。
* * *
それから三日後。
朝、目を覚ますと、俺は呆気なく男に戻っていた。
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