このクズ野郎。俺と一緒に死んでくれ。

「ヤらせてやれよ」(5)

「うまそうに男の一物しゃぶって、無理やり犯されてアヘアヘ言ってさ。
 やっぱ、お前って、ドのつく淫乱だわ」

 頬に貴文が触れる。
 俺は反射的にその手をはたき落としていた。

「翔太?」

「俺は……お前以外となんて、したくなかった」

 彼が佐藤たちを殴った時、一瞬でもあれは俺のためだったのではないかと思った。
 なんて、バカだろう。笑ってしまう。

「あんだけヤッて、したくなかったはねーだろ」

「それは……だって……お前が、ヤらせてやれって……!」

「そうだ。言った。でも、お前……抵抗すらしなかったじゃん」

「……っ」

「お前って俺の言うこと、なんでも聞くよな。そんなに俺のこと好きなのか?」

 顎を掴まれ上向かせられる。

「何し……」

「キスしてやろうか」

 俺は目を見開いた。心がざわつく。

「……い、いらない」

「なんで? 俺はしたい」

 唇が近づき、熱い吐息が鼻先を掠め――俺は彼を力の限り押しやった。

「……何すんだよ」

「……ごめん。帰るよ」

 俺は立ち上がると、一度として彼を振り返らず屋上を後にした。
 貴文は俺を引き止めたりはしなかった。
 なんだか、ホッとして……冷たい涙が止めどもなく溢れてきた。

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