「ヤらせてやれよ」(3)
「見るだけって、言って……」
「なぁ、下は? 下は、どーなってんの?」
「関係ないだろ! もう離せ! 離せよ……ッ!」
抵抗虚しく、数人がかりで押し倒されてしまった。
「あっ……!」
ガチャガチャとベルトを外されたかと思うと、
あっという間に下も脱がされる。
「げぇ! まぢかよ、こんなことあンの!? まぢ、ホラーじゃん!!」
足を抱えられ開脚させられた。
ここにきて、俺はやっと身の危険を感じた。でも、何もかもが遅すぎる。
逃げようにも、拘束された体では力を込めることなんてできない。
「あぐっ」
秘部に無遠慮に指が突っ込まれ、
全身の毛穴から、ぶわっと冷や汗が出た。
「あったけー……。あ、ヤベ。勃起してきた……」
気持ち悪い。ひたすらに、気持ち悪いし、痛い。
「抜け、よ……気持ち悪いんだよ……っ」
「そんなことないだろ。ちょっとずつ濡れてきてるし……」
「気持ち悪いって、言ってんだよ!!」
俺の答えに佐藤がきょとんとする。
やがて、彼は苛立たしげに眉尻を吊り上げた。
「強がりやがって……」
「佐藤、ヘタクソだってさ」「童貞なんだから許してやれよ」と周囲がゲラゲラ笑う。
「童貞じゃねえし!」
佐藤は声を荒げると指を抜く。
それから彼は貴文に顔を向けた。
「なあ、貴ちゃん。ヤッてもいい?」
「ふっ……ふざけんな! 離せ! 離せよ!!」
(貴文っ……)
助けを求めて彼を見れば、目があった。
でも、それだけだ。
貴文は感情の読めない表情のまま、タバコを吸い続けている。
「なあなあ、貴ちゃん。聞いてる?」
「……聞いてる」
次いで彼はタバコを投げ捨てた。
靴の踵で火を消してからフッと嘆息した。
「ヤらせてやれよ、翔太。セックス好きだろ?」
言葉にざっと血の気が引いた。
俺は決してセックスが好きなわけじゃない。
貴文とするから好きなだけだ。
(なんで……)
貴文の瞳はガラス玉みたいだった。
澄んでいる。
そこには何もない。
どうでもいい、と目が言っている。
「貴ちゃんの許可も出たし、これはもう挿れるしかないっしょ。……みんなで」
野卑な笑いが耳にこだまする。
貴文が止めてくれると信じていた。
だって、俺の体は貴文のものだ。そう言ったのに。
「は……」
俺は知れず乾いた笑いをこぼした。
(……俺は知っていたじゃないか)
俺だけじゃない。
佐藤も、ほかの取り巻きも、恋人の女子でさえ、
貴文にとっては道端の石コロと変わらない。
彼を一番に見ていた俺が、気付かないわけがないのだ。
「一緒に気持ち良くなろーぜい」
濡れてもいない割れ目に、佐藤のいきり立つ熱い肉傘が押し当てられるのを、
俺は冷めた目で見つめた。
今更、逃げようたって不可能だし……
それに、貴文がヤらせてやれと言うのだ。
「そんじゃ、よろしくね。ショータちゃん♪」
体を引き裂くような痛みに、俺はくぐもった声を漏らした。