「ヤらせてやれよ」(1)
帰りのホームルームが終わると、俺は手早く帰り支度をして教室を出た。
貴文からの呼び出しだ。
俺は小躍りするレベルで足早に屋上へ向かう。
ここ数日、俺は最高の毎日を送っていた。
貴文の役に立っている。求められている。
その証拠に、貴文は日替わりの恋人たちを解散して俺だけを傍に置いた。
最高だ。その一言に尽きる。
「貴文……!」
気持ち高めの声で貴文を呼び、
俺は意気揚々と屋上の扉を開け……足を止めた。
「遅かったな」
「よっ、ショータ!」
貴文がフェンスに寄りかかりタバコの煙をくゆらせている。
その横には、何故か佐藤と数人の取り巻きの姿があった。
(なんで佐藤たちがいるんだ?)
てっきりヤりたいのだと思ってきたのに。
俺は虚をつかれたような気持ちになる。
「ええと……何の用? 呼ばれたから、来たんだけど」
「コイツが、お前の胸、触りたいんだとさ」
「は……?」
言葉の意味を取りあぐねて、俺は目を瞬かせた。
胸を触る? なんで?
――バレたのか。いや、バラされたのか。
「な、何言ってんの。
お……男の、真っ平らな胸なんて触って、どうしたいんだよ」
「隠すなってー。オレとお前の仲じゃん」
佐藤がニヤついた笑みを張り付けて、近づいてくる。
俺は説明を求めて貴文を見た。
彼はつまらなそうに肩をすくめると灰を落とす。
それから、タバコを吸って白い煙を吐き出してから口を開いた。
「そいつ、俺がお前とヤッてんの見たんだとさ」
「……ッ!?」
「そゆわけ。やー、びびったよ。お前ら、デキてたんかーいって。
でも、貴ちゃんに聞いたらショータ、女の子になっちゃったんだって言うからさー」
「なっ……なんで……っ!」