胸騒ぎ(4)
ヌプンっと指が抜かれる。
待ち焦がれた熱を思い、俺は浅い呼吸を繰り返した。
――しかし、いつになっても貴文は抱いてくれない。
「た……貴文……?」
「明確、つったろ。全然ダメだ。そんなんじゃ、おねだりとは言えねー」
「そ、そんな……」
「童貞くんにヒントをやるよ。そういうのはな、言葉だけじゃダメなんだ。
お前もエロ漫画くらい読んだことあるだろ?」
「う……」
耳朶に熱い吐息が吹き掛かる。
「できるだろ? 翔太。それとも……嫌か?」
その言葉が耳に届いた瞬間、俺はふらふらと自身の手を尻肉に這わせた。
そうして指先に力を込めて、ゆっくりと左右に押し開く。
くちゅ、と水音がした。
外気に触れて、穴口がヒクつくのを感じる。
「お、俺の、あ、穴に……た、かふみの、挿れて……ください……」
「……んー。及第点だが、まあいいか」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
すると、背後でガサガサと音がした。
持ってきていた茶色の紙袋から、何かを取り出した気配に不安が過る。
背後を振り返ろうとすれば、頭を抑えつけられた。
「貴文? 何――はへぁっ……!?」
唐突に固くて冷たいものが俺の中に侵入してきて、目を見開く。
「な、何、挿れっ……」
貴文のものではない。
それと同じくらいの大きさで、冷たいもの。
加えて、中の棒状のものは何やら先端がへそ側にとんがっていて、
敏感な部分を掠めてきていた。
しかも、外には花芯に当たるようにイボイボした突起が付いている。
「がっ、学校に、何持ってきてるんだよ……!」
「大人のオモチャ。一回、こういうのやってみたかったんだよな」
貴文は楽しそうに笑いながら、
膝まで下げられていた俺の下着とズボンを元に戻した。
「いいな? 放課後までイクなよ。
そうしたら、お望み通り俺のを挿れてやる」
貴文は思わせぶりに俺の脇腹を撫でてから、離れる。
俺は机を支えに、ふらふらと振り返った。
「……お前なら、やってくれるだろ」
優しげに目を細めて、小首を傾げる。
俺が俯くと、それを首肯と捉えたのか、
彼は鼻歌交じりに空き教室を出ていった。
俺はそんな彼の広い背中を、呆然と見送った。