望んだ日常(3)
「あ、ぁ、やだ、それ……そこ、弄るのはっ……刺激、強すぎてっ……」
貴文にしがみつき、体を強張らせる。
目が裏返るような快感が体の中で暴れ回っている。
動けないでいると、もどかしげに突き上げられた。
「んひぃっ……!?」
「聞こえなかったのか? さっさと自分で動けっての」
「ヒ、は、ぁ……う、ううっ……」
包皮を剥かれ、敏感に熟れた花芽をこねくり回されて、
バチバチと目の前で、火花が散った。
とにかく、この苦しいほどの快感から逃れたくて、必死に腰を振る。
しかし、ますます自分を追い詰める結果になった。
「や、やだ、イクイク、イッ……!」
内腿をぎゅっと引き締め体を硬直させると、貴文の突き上げが再開した。
「……そうだ、いいこと思いついた」
「あっ、ひぁっ、う、んぅうっ」
「お前さ、今度、その胸ペタシャツ着ないで学校来いよ。
あ、もちろんガムテープ巻いたりもダメな」
「へ、ぁ、な、何言って……っ」
「なんだ? 嫌なのか?」
「そんなことっ、できっ……はひっ」
「できるだろ?」
突き上げが激しさを増し、花芯を弄る指先も小刻みに動かされると、
何が何だか分からなくなる。
「あ、ア、ぁっ、やめ、止まっ……今、イッて……ひ、ひぐっ、う、ううっ!」
「ブラも付けてこい。この前、買ったやつがあるから」
臍の裏辺りを集中的にゴリゴリと突き上げられ、前後不覚に陥る。
俺は生温かな液体を撒き散らしながら、貪られ続けた。
いつものように、一度では終えずにベッドへ移動し、
体位を変えて、更に何度も何度も。
気が付けば、俺は意識を手放していた。 * * *
その日の夜は、彼の部屋に泊まった。
(貴文の匂いがする……)
深夜、ふいに瞼を持ち上げた俺は、
朦朧とする意識の中で頭の下の枕に顔を押し付けた。
胸いっぱいに彼の香りを吸い込む。
(幸せだな)
俺は初めて自分を好きだと思った。
こんなに彼の役に立てている。生きている実感を覚える。
貴文も、他の誰より俺のことを傍に置いてくれている。
思わず口の端を持ち上げた俺は、貴文の姿が隣にないことに気付いた。
「貴文……?」
視線を彷徨わせると、薄明かりの灯る場所がある。
目を眇めれば、貴文がデスクに向かっていた。
(何してるんだ? もしかして……勉強、とか?)
真っ直ぐと伸びた姿勢に、過去の彼の姿が重なる。
その背をぼんやりと見つめていると、あの夏の日の空が目の前に広がる。
ランドセルを背負った俺。
隣を歩く貴文が声をあげて笑い、つられて俺も笑う。
何を話しているのかは分からない。
会話が耳をすり抜けていく。
俺は温かな気持ちを胸に、深い眠りに落ちていった。