番外編2 セシル君は素直になりたい(1)
<div =”preface”> いつもお読み頂きまして、誠にありがとうございますm(_ _)m セシル視点、ヴィンセントとのイチャエロサイドストーリーです。 お楽しみ頂けますと幸いです! </div>
ユリアの屋敷を出てから、1週間。
すっかり森の気配を感じなくなった頃、ボクとヴィンセントは
東方との交易路の途中にある街――トリアイナに寄った。
宿屋を取り、ヴィンセントの体を診て貰うため病院へ向かう。
ついで武器屋に壊れた大剣を預け、
2人で即日から出来る仕事を探す。
そんな風にしてそこそこお金を稼いで、次の街へ――
それがボクらの旅のスタイルだ。
初日は忙しく過ぎ……
「あ~、もうヘトヘトだよ」
深夜。宿屋に戻るやいなや、ボクはベッドに身を投げ出した。
埃っぽい香りが舞い上がったけれど、まあ許容範囲だ。
「セシル」
「なに?」
声のした方に顔を向ければ、
急にヴィンセントが覆い被さってきて……
――ボクの唇に、優しくキスを落とした。
「ぇ……」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
ヴィンセントの薄い唇が、2度、3度とボクの口に触れる。
「ちょ、ヴィ……ん、んんっ……!」
なんで? なんで、キス!?
もしかして酔っ払ってる?
でも、お酒なんて飲んでなかったし。
ボクを見下ろすヴィンセントの眼差しは、
とても柔らかくて、目が合った瞬間に胸の鼓動がキュンと跳ねる。
……なんだよ、キュンって。
相手はヴィンセントだぞ!?
「あ、ぅ……なに……なんで……あっ……!」
節くれ立った手がスカートの下に忍び込んできた。
内腿をなぞり、やがて到達したボクの足の間では、
ソレは恥ずかしいほど固くなっている。
「ふあぅ!」
下着を引っ張られたかと思えば、剥き出しになったソコを扱かれた。
自分の手とは似ても似つかない、大きくて熱い手に、
じくじくと甘い疼きが広がっていく。
世界がぼやぼやしていた。
ヴィンセントとこんなエッチなことしてるだなんて……
一体、ボクはどうしちゃったんだろう。
「んっ、やだ、ヴィンセント……待って……
そんな……ぁ」
ああ……でも…………気持ちいい。
「あっ、あぁっ、それ、そんな激しくしたらっ……
イッちゃう……イッちゃうから……っ」
「好きだ、セシル」
「……っ!」
耳朶に囁かれた言葉に、体が震えた。
「ボクも……ボクも、好きっ……!」
応えるように、ボクはヴィンセントの首に腕を回す。
再び貪るような淫らなキスをすれば、
勢いよく感情が高みへ向かって駆け上る。
「ン、ぁっ、ヴィンセント……
出る……出ちゃ……あぁぁあ……!」
くちゅくちゅと水音をたてて舌を絡め合いながら、
ボクは背を仰け反らせた。
体の中で炎が燃え上がって、
疑問も思考も、何もかもが真っ白に塗り潰されていく。
――その時だった。
「セシル」
ヴィンセントの声にハッとして、ボクは『目を開けた』。
「うあ……っ!?」
「大丈夫か? 酷くうなされていたが」
汗で額に張り付いたボクの前髪を、ヴィンセントが抓んで退かしてくれる。
ボクは肩で息をしながら辺りを見渡した。
薄暗いココは、なんの変哲も無い宿屋の一室。
木造の壁に安物の絵画が飾ってあり、
サイドテーブルには、教会のお祈り用文言集である薄いバイブルが置いてある。
部屋の奥の窓は締め切られていたけれど、
うっすらと日の光が透けているのが見えた。……朝だ。
「セシル?」
ヴィンセントが訝しげにする。
その瞬間、ボッと頬に熱が集まって、ボクは上掛けを頭までかぶった。
……つまりは、全て夢だったわけだ。
「嫌な夢でも見たか?」
「……別に」
ボクはもぞもぞも内股を擦り合わせた。
……くそ、やらかした。
「本当に大丈夫か? もしかして体調が悪いんじゃ……」
上掛けを引っ張られて、ボクは悲鳴を上げた。
「わぁああっ! 止めろ! 離せよ!!」
「何をそんなに慌てているんだ?」
「慌ててるんじゃない! お、お腹が空いたんだよ!
昨日言ってたアップルパイ!
あれ、食べたくて!! 今すぐ買ってきて!!!」
「買ってきてって、お前な……。
まだ、店はやっていないぞ」
「店が開くまで並んでてって言ってんの!
行列出来てたの、見たでしょ?
早めに並んでおかないと、売り切れちゃう!」
沈黙が落ちる。
ぎゅっと上掛けを握りしめると、大きな溜息が落ちた。
「……分かった」
足音が遠ざかり、部屋の扉が開閉する音が続く。
それからしばらく丸まっていたボクは、そろりと顔を上げた。
……ヴィンセントの姿は見えない。
ボクはベッドから飛び下りると、奥の浴室に駆け込んだ。