人狼坊ちゃんの世話係

キャラメル・ショコラ(8)

「見るなよって……
 そんな無茶言わないでください」

 上擦った声で応えると、
 ユリアはグッと腰を押し付けてきた。

「ひっ……ば、か、何、動いてーー」

「バンさん、凄いよ……
 中、ゆるゆるになっちゃってる……」

 ゆっくり腰を引き、
 また、ずっぷりと奥を抉られる。

「んぁっ……」

「いつもよりも奥まで入ってるの、分かりますか……?」

「は……ぁ……あ……」

「凄い……奥までトロトロ……
 気持ちいい……」

「んっ、く、ふ……ぁっ……!」

 はしたなく足を開き、
 オレは犬みたいに舌を出して、胸を喘がせた。

 腹に散った白濁と透明な液体が、脇腹を伝い、
 ベッドのシーツが、ぐっしょりと濡れている。

「ごめん。ごめんね、バンさん。
 もうちょっとだけ……」

「あっ、ぅ、あ……」

 唇からは、意味をなさない音が溢れる。
 腰も抜けている。

 串刺しにされるみたいに臓器が押し上げられ、
 その度に、目の前で火花が散り、
 訳が分からなくなった。

 性感はこれ以上なく鋭く尖り、
 壊れたように絶頂に飛び続ける。

 目が裏返りそうだ。
 顔を覆った手が、汗だか唾液だか涙だか鼻水だかで濡れていた。
 恥も何もあったもんじゃない。

「やば、い、やば……ユリア、ぁ、きもぢいい……
 そこ、ぁ、あ、あ、あっ……」

「ここ? 奥の、この、コリコリしたところ、気持ちいい……?」

「んう、ぅあっ、あっ、そこ、そごっ……いいっ……」

「バンさん……泣いてるの? 泣くほど、気持ちいいの?」

「ん、いい、いい……ヤバ……ぁ……」

「可愛い……可愛いよ、バンさん……っ」

 涙を拭うようにキスが降り、頬を舐め回される。

「愛してます……バンさん、バンさんっ……」

「ん、んんっ、んむっ、ぅ」

 呼吸も困難なほど、深く唇を塞がれた。
 オレも舌を突き出し、それに応えるようにした。

 淫猥な水音が立つ。
 唾液を塗り込むようにして、舌を絡ませた。
 お互いに食べ合うみたいに。

「は、あ、あぁ……すげ、熱い……」

 やがて、物凄い量の白濁が腹の奥に注がれた。

 長い吐精が終わっても、
 ユリアはしばらくの間、オレの口腔を
 その太い舌で掻き混ぜ続けていた。

* * *

 ベッドの上の濡れた部分にタオルを広げて、
 その脇でオレは背を丸めて横になっていた。

 体はすっかり清められていたが、
 腰が抜けてるし、指先1つ動かすのも億劫だ。

「すみませんでした……」

 浴室から出てきたユリアは、開口一番、そう言った。
 ベッドに腰掛けて、オレの体をあたふたと気遣わしげに撫でる。
 見慣れた光景だ、内心苦笑してしまう。

「謝るなよ。求められるのは、嫌いじゃねえし。
 でもまあ、次はお手柔らかに頼むわ……」

 潮吹きなんて、男娼時代も経験したことはなかった。
 まあ後片付けが大変だしで、店的にもNGだったこともあるが。

「お手柔らかに……」

 オレの言葉を繰り返したユリアは、何故かしょんぼりと項垂れた。

「なんで、そんな顔するんだよ」

「……だって、バンさん凄く可愛かったんだもの。
 ねえ、毎回じゃなければ、またしてもいいですか?」

「だっ、ダメだ」

「気持ち良さそうにしてたのに?」

「してねぇよ! 幻覚だ、幻覚!!」

 射精後から、ああなるまでの時間は、苦行としか言いようがない。
 しかし、それを乗り越えた後の解放感は、
 中でイくのとはまた違った快感で……

 なんてことを、素直に伝えるわけにはいかないのだ。
 度々、あの状態にまで攻められて、
 クセにでもなったら、それこそ本気で困る。

「オレはフツーにするのが、スキなんだよ。
 あれは、あんまし気持ちよくはねぇっつーか……」

「……バンさん」

 平静を装って告げれば、ユリアの真剣な声が落ちた。

「……なんだよ?」

「嘘ついてますね」

-130p-