胸騒ぎ(6)
教師がチラリと周囲に目を走らせた。
バイブ音の出所を探しているのだろう。
「あの、体調悪くて……ほ、保健室に、行っても……?」
「あ、あぁ。もちろん。無理はするな」
「ありがとう、ございます」
足に力を入れて、椅子から立ち上がる。
「誰か付き添わせようか?」
「いえっ……ご迷惑に、なるので。テスト前の大事な時期です、し……ぃっ」
爪が食い込むほど、俺は拳を握り締めた。
この快感から逃げ出したい。
今すぐにでも床に体を投げ出して、痴態を晒してしまいたい。
何もかもどうでもいいとすら思い始めている。
俺は逃げるように教室を出た。もう限界なんて超えていた。
(イク、イク……やば……ぁ……)
壁を伝い、震える足をなんとか前に出す。
「なんだ、もうギブアップか?」
悪魔のような、優しい声が背後から聞こえる。
振り返る間もなく、唐突に抱き寄せられたかと思うと股間を弄られた。
「たかふっ……ヒンッ……」
その瞬間、目の前に火花が散った。
「あ、ぁ、あっ……」
ガクリと倒れ込んだ俺を支えながら、クツクツと貴文は笑った。
「放課後まで我慢って言ったろ? これはお仕置きだな」
貴文は俺を軽々と引きずりながら保健室へ向かう。
俺は喉の渇いた犬のように、荒く息を吐きながら下唇を舐めた。
めくるめくお仕置きを思うと、視界が滲む。
期待は裏切られることなく、俺は散々忍耐力のなさを馬鹿にされながら、
保健室で乱された。
倫理的なボーダーラインが日に日に下回っていく。
秘密を共有し、体を重ねれば重ねるほど、
俺は貴文との絆が深まっていくのを感じていた。
俺は……本当に、馬鹿だった。