最果ての約束(8)
「はい。男同士ですから、正確には結婚じゃないんですけど。
世話係を辞めてもらって、
僕の家族になって欲しいと思っています」
そう躊躇いもなく続けたユリアに、
オレはパクパクと無意味に口を開閉させた。
改めて家族に伝えると、胸がこそばゆい。
ダンとギルが顔を見合わせる。
それからパッと顔を綻ばせた。
「おめでとう、兄さん」
「おめでとう兄ちゃん!!」
「え……」
「どうして驚くの?
まさか、俺たちが反対するとでも思った?」
「や、それは思ってねぇけど、
でも、なんか、もっと、ええと……」
正直なところ、拍子抜けした。
「立ち話もなんだし、中に入ろう。
しばらくうちに滞在するんだよね?」
「ああ。そのつもりだった」
「良かった。カレンも喜ぶよ」
「カレンさん?」
「長女だよ」と応えて、オレは改めて弟妹の紹介をする。
「一番上の弟がコイツ――ダンだ。
で、次に……今は見当たらねぇけど妹のカレンと弟のアーサーがいて、
その下にギルバート、クリスが1番下だな」
ダンの後ろから顔を覗かせていたクリスが隠れる。
オレは苦笑と共に、弟に向き直った。
「それで、カレンたちは何処だ?
小煩い声が聞こえねぇけど」
その時だ。
馬の蹄の音が聞こえると、
門のすぐ目の前で1台の馬車が停まった。
乱暴に扉が開く。
続いて、カツンとヒールを鳴らして小柄の女が出てきた。
ふたつに編んだ髪が、動き合わせて肩のところで跳ねる。
「もう、式やるなんて言わなきゃ良かったわ。
なんで一度しか着ない服のために、
貴重な一日を潰さなきゃならないのよ。
……って、あれ? ええっ!?」
そうして、彼女おはオレの顔を見て素っ頓狂な声を上げた。
カレンだ。
「姉さん、待って。まだ生地が――わぶっ!」
その後を追うようにして、黒髪の少年が馬車から出てくる。
彼は3男のアーサーで、両手に荷物を抱えた彼は、
カレンの背中にぶつかって、派手に尻餅をついた。
「久しぶり」
変わりない妹弟の姿に思わず噴き出す。
片手を挙げれば、アーサーが目をまん丸に見開いた。
「に、ににに、兄さん!? ついに死んで戻って……っ!?」
「や、生きてるし」
「きゃああああ! お兄ちゃーーーんっ!!!」
カレンと、荷物を放ったアーサーが飛びついてくる。
「おっと……元気そうだな」
「本当に? 本当に兄さん、死んでない?」
「生きてる、生きてる」
「夢みたい……もう会えないと思ってたよぉ……」
驚いたような顔をするユリアに気付いて、オレは肩を竦ませた。
家族が集まると賑やかこの上ない。
静かな屋敷で暮らしていたユリアには、
目新しい光景なのだろう。
「でも、ホントに良かった」
カレンが体を離すと、クスンと鼻を鳴らす。
「お兄ちゃん、逃げてこられたんだね。
あたしたち、ずっと心配してて――」
ゴホンと、ダンが空咳を落とした。
「カレン、お客さんの前だよ」
「え? あ……っ!」
カレンがユリアに気付き、ハッと両手を押し当てる。
ユリアが困ったように会釈すると、
代わりに、ダンが口を開いた。
「全員揃ったことだし、今度こそ中にどうぞ。
すぐに食事を用意させますから」
開いた玄関扉の向こうに、頭を下げる数人のメイドの姿が見えた。