ファミリア・ラプソディア

バカと恋わずらい(5)

* * *

 類さんの指先が、僕のパジャマのボタンを外していく。袖を抜かれ、白々と素肌が照明の下に晒される。

「あ、あの、電気……」

 ズボンを脱ぐ番になって、僕は慌ててリモコンを探した。けれど、その手はすぐに制止されてしまった。

「このまま、な?」

「……恥ずかしいですよ」

「知ってるよ。でも、伝のこと全部……隅々まで見たい」

 彼は、僕の『好き』を試したいと言った。
 これが確認方法のひとつなら、優先させるべき何モノも存在しない。

 僕は探り当てたリモコンを手放す。
 それから顔を背けた。

「わ、かりました……どうぞ、見て下さい」

「うん……」

 類さんの手がズボンを引っ張るのに合わせて、腰を浮かせた。
 やがて一糸まとわぬ姿になった僕は、ベッドのシーツを握りしめる。

 視線がちくちくと肌に刺さった。
 たまらなく恥ずかしくて、息が引きつる。

「……お。ちゃんと毎日の成果が出てるじゃん」

 と、類さんの手が僕の腹筋の辺りをなぞった。

「ほ、本当ですか!?」

 僕は状況も忘れて、ハッと目を見開く。

「うん。厚くなった気がする。ちょい力入れてみ?」

「は、はい……!」

 言われた通り、腹筋に力を込めた。
 そこを、グッと類さんが押すようにする。

「お-。固い固い」

 類さんがニコニコ笑う。
 僕は凄く嬉しくなった。

 ここ最近、押せば倒れるヒョロガリ体質が改善してきたと感じていたが、こうして誰かに ……とりわけ類さんに認められると喜びもひとしおだ。

 夏にみんなで海に行ってから、いろいろとニャン太さんとソウさんに相談に乗って貰った が、本当に感謝しかない……

「あ、あのですね、腹筋より足の方が筋肉ついたと思うんです。ほら……」

 僕は身体を起こすと類さんに足を示す。
 力を入れてみせれば、彼は腹筋にしたようにさすさすと脹ら脛を撫でた。

「ホントだ。マジで足の筋肉も付いてんじゃん」

「ですよね……!」

 破顔する。
 ついで、はたとした。
 全裸で何をはしゃいでいるんだ、僕は。
 今はそんな時じゃないだろ……

「……すみません」

 謝れば、類さんが苦笑を噛み殺す。

「ははっ。身体に自信つくのはいいことだろ」

「でも、今話すべきことじゃありませんでした……」

「いいじゃん。楽しい方が」

 頬に、類さんの手が触れた。

「エロいだけより、ずっといいよ」

 そう言って、彼は僕の唇に吸い付いた。

「んっ……」

 そっと触れるだけのキスを一度。
 それから角度を変えて、舌を伸ばす。

「ん、ンッ、ふ……ぁ」

 舌の表面を擦り合わせ、唇で扱き、吐息を奪うようにする。
 ぐちゅぐちゅと淫らな音を立てて舌を絡め合い、僕は彼の唾液をすすった。

 心ゆくまでそうしてから、僕らは唇を離した。
 淫猥な銀の糸が部屋の明かりを照り返し、つ、と顎を伝う。

「は、ぁ……」

 こぼれる甘いため息。
 類さんは陶然とする僕をそっと押し倒すと、僕の上に馬乗りになった。

「手、頭の上で組んで」

「こ、こうですか?」

「そう。そのままな」

 言われた通りにすれば、類さんの手が胸に伸びる。

「あっ……」

 両側の中心の、僅かな外側を触れるか触れないかの強さでタッチされた。
 むず痒さに、中心がツンと上向いていく。

「……ローションある?」

「は、はい。ベッドの下の引き出しに……」

「了解。開けるぞ」

「ど、どうぞ」

 類さんは取り出したローションを僕の胸に垂らした。

「んぅうっ……」

 先ほどよりも熱心に触られる。
 時折、掠める程度だった乳首へ刺激も回数が増していき、ついに重点的にそこを攻められた。

「あっ、ぁ、類さっ……」

 ヌルヌルとした感触に加えて、引っ張られたり、抓まれたり、指先で上下左右に弾かれたりする。

 自然と腰が揺れた。
 足が開く。

「はぁ、はぁ、あっ、あぁっ……んぅうっ」

 食いしばった唇から、鼻に掛かった声が溢れ出る。
 類さんが僕を見下ろしている。
 身体の変化全てを眺められている。

 僕は目を閉じた。少しだけ羞恥心が和らぐ。と、

「ちゃんと目、開けてて」

 類さんの言葉に、僕はおずおずと彼を見上げた。

「……どこ見てればいいか、わかんないです」

「俺のこと見てればいいじゃん」

 類さんは手を休めず言った。

「伝の身体弄りながら、俺がどんな風に興奮してるか……ちゃんと見て」

「あうっ」

 乳首を強めに引っ張られ、吐息が弾む。
 僕は泣きそうになりながら類さんに目線を向けた。

 彼はペロリと下唇を舐めた。

 ドキリとした。
 上気した頬、獲物を狙うかのように鋭く、潤んだ瞳……足の間で隆起する熱は、スウェットの上からでもわかるほどだ。

 好きな相手が、自分に欲情している。
 その事実は僕の身体をこれ以上なく熱くした。

「る、類さっ……」

 欲しい。奥まで貫かれたい。
 彼の求めに応えたい……何もわからなくなるほど、激しく乱されたい。

「……どうした、伝? もじもじして」

「も、もう……中……欲しいです……」

「ふぅん?……どうしよっかな」

「ゴム、有りますよ……や、安いのですけど……だから……」

 前みたいに我慢することはないはずだ。
 彼はぎゅむっと僕の乳首を押し潰すようにした。

「はあぅっ」

 胸への愛撫が続く。
 もどかしさに視界が滲む。と、

「伝はさ……尻、よく自分で弄ってんの?」

 類さんが問うた。
 僕は浅い呼吸を繰り返す。正直に認めるのはあまりに恥ずかしい。けれど、嘘をついても彼にはバレてしまうに違いない。

「よ、よくかは、わからないですけど……た、多少は……あの、それが何か……?」

「ああ、うん……伝が自分でしてるのみたいなーと思って」

「へっ……!?」

 声が裏返る。
 類さんは僕の上からどくと、ニコリと笑った。

「俺の上に跨がってさ、いつもどうやって自分でしてるか……教えてよ」

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