ファミリア・ラプソディア

腰痛とDIY(3)

* * *

 その後は予定していたデスクを見て回った。
 さすがにデスクはふたつもいらないし、ふたりが揉めたらどうしようかと思っていたが……

「やっぱ作業スペースは広い方がいいよな」

「L字デスクなら角のスペース無駄にならないよね。あっ、棚もついてる方がいいか」

「引き出しとか、収納も多いと便利だよな」

 今のところ問題はなさそうだ。

 ……にしても。
 僕はデスクの値段を眺め歩きながら、内心、ホッと溜息をついた。
 たくさんお手頃価格なものがある。

 ホームセンターに行きたいと進言して本当に良かった。
 ……もしも類さんたちが普段行っているようなお店に出掛けたら、マホガニーとかウォールナットのデスクを勧められたりしたかもしれない。そんなことになったら恐縮し過ぎて死ぬ。

「伝、どうだ? 気に入ったのあったか?」

「はい。これがいいかな、と」

 僕は目を付けていたダークブラウンのデスクを選んだ。
棚も引き出しもついていない、小ぶりのものだが、とにかく1番安い。売れ残りなのか、15パーセントオフで税込3000円。

「えええっ!? それ、板に足ついてるだけじゃん」

「シンプルが一番いいんです」

「ノートパソコンくらいしか置けないよ?」

「十分ですよ」

「ふぅん……そーいうもんかねぇ……」

 欲を言えば、複数の資料が開けるようにもう少しだけスペースがあると助かるが……今使っているのに比べたら遙かにいい。

その時、ニャン太さんがこちらを覗き込むようにしてきた。

「ねえ、デンデン」

「……なんです?」

「本当はもっと欲しいのあるんじゃないの~?」

「い、いえ、これが欲しいんですよ」

「遠慮してない?」

「してません、してません」

 ブンブン首を振る。
 ニャン太さんは、顎に手を当てると何か考えるようにした。それからハッと顔を上げた。

「ごめん。ボク、ワガママ言ってもいいかな?」

「はい? なんでしょう?」

「引っ越し祝い……手作りデスクをプレゼントするよ」

「え!?」

「今、流行ってるじゃん! DV!」

「DIYな」

 すかさず、類さんが訂正する。
 ニャン太さんは目をキラキラ輝かせて続けた。

「手作りなら記念になるし、これくらいシンプルなら作れないこともなさそうだし! それに何より楽しそう!」

「まあ確かに、楽しそうではある」

「ま、待ってくださいよ。僕はこのデスクが……」

 手作りなんて手間が掛かりすぎる。
 材料費だって、眼前にあるデスクより確実に高くつくだろう。

「言ったでしょ、ボクのワガママだって」

 それを言われてしまったら、何も言えない。

「じゃあ、一旦デスクの話は家に持ち帰ってみんなで話してみるか」

「設計図?とか、決めなきゃだしね」

「そうそう」

「くぅ~……! テンションめちゃ上がる……!」

 楽しそうにするニャン太さんに途方に暮れる。
 そんな僕の髪を類さんがくしゃりと撫でた。

「帰るぞ、伝」

 颯爽と横切った類さんの背を見つめる。
 彼は少し進んでから、僕を振り返った。

「どうした?」

「いえ……」

 僕は、物理的にも精神的にも、たくさんのものを貰いすぎている。
 なのに、何も返せない自分が歯がゆくて情けない。
 せめて迷惑をかけないようにと思うのに……。

「家帰ったら忙しくなりそうだな。いろいろ調べねぇと」

「うちのお客さんにも聞いてみるよ。きっとDV趣味な人もいるだろうし!」

「DIYな。DV野郎は警察に突き出せ」

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